サラリーマンなど年末調整を会社に任せている人で、不動産売却をした際に「確定申告」の手続きを忘れてしまう人が多く感じます。税務署からの連絡で気づく事のないよう、予め確定申告について知っておきましょう。
今回は不動産売却によって確定申告が必要なケースと、その際に必要となる書類について紹介しますが、これまで一度も申告した事がない方でも理解するのは容易な内容となります。
今は関係がない方でも知っておいて損する事ではないので、この機会にぜひ学んでおくと、後々役に立つことがきっとあるはずです。
1.確定申告が必要なケース
ネットの書き込みなどを見ていると勘違いしている方が多いようですが、不動産を売却した人全員に税法上、確定申告をしなくてはいけないというのは間違いなのです。では、売却してどういったケースの時に必要があるのか?確認していきましょう。
1-1. 売却益がでた時は必須
不動産売却によって利益が出た場合は、確定申告をする必要があります。
売却で得た収入から譲渡費用・取得費を差し引いた金額がプラスになっている場合であり、その金額に対して「譲渡所得税」が掛かることになります。
『不動産を売却すると税金がいくらかかるのか1分で解説』で詳しく解説しています。
1-2. 売却による損失があれば不要
不動産売却によって損失が出た場合は、確定申告をする必要はありません。
確定申告というのは給与所得以外に収入があった場合にするものであり、損をした場合は税法上、ほったらかしにしておいても大丈夫です。しかし、以下の事を覚えておくと得する事ができます。
損益通算により税金を抑えられる
損失がある場合でも確定申告する事によって、毎月貰っている給与所得などに対する税金を安くすることが可能となります。この事を「損益通算」と呼びますが、不動産売却に限らず株式やFXなどにも適用されるため、給与以外にお金を動かしている方は是非活用していきましょう。
1-3. その他の確定申告が必要となるケース
- 2つ以上から給与所得がある
- 会社で年末調整をしていない
- 年収2,000万円を超えている
- アフィリエイトなどの収入が20万円以上ある
上記以外にもいろいろと細かい条件がありますが、一般の方はとりあえずこの4点を覚えておけば問題ないと思います。該当する場合は確定申告が必要となる可能性があるので、申告忘れが内容に気を付けてください。
2.確定申告をしないとどうなるのか
確定申告の義務が発生したのに申告の手続きを行わなかった場合、どのようなリスクがあるのかしっておきましょう。申告しなくてはいけないと分かっておきながら意図的にしないのは「脱税」であり、厳しい処罰の対象となるかもしれません。
2-1. 申告期限
確定申告は1年間(1月1日~12月31日)の所得を、翌年の2月1日~3月15日までに申告及び納税をしなくてはいけません。
2-2. 無申告加算税
上記期間内に申告及び納税を怠った場合「無申告加算税」が課されることになり、以下のペナルティとなります。
50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額
納税額が大きくなるにつれてペナルティとなる金額も増え、決して無視することのできない割合となっています。ただ、次の要件を満たせば無申告加算税を課されることはありません。
- 申告期限から2週間以内に自主的に手続きする
- 納付すべき税額の金額を法定納期限までに納付し、5年前のまでに無申告加算税または重加算税を課された事がなく、期限内申告をする意思があると認められる場合の無申告加算税の不適用をうけていない
少し難しい要件ですが、要は期限が少し過ぎてもなるべく早めに申告してください、という事です。
2-3. 延滞税
税金を期限内に納付しない場合、納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、延滞税が自動的に課されることとなります。
延滞税の割合は少々複雑な仕組みとなっており、納付期限の翌日から2ヵ月間はその年度の税率に※1特例基準割合のどちらか低い方が適用されます。それいがいは7.3%か特例基準割合の低い方が適用されます。
特例基準割合とは・・
各年の前年の11月30日を経過する時における日本銀行法第15条第1項第1号 の規定により定められる商業手形の基準割引率に年4%の割合を加算した割合をいい、国税での延滞税、利子税や地方税等での延滞金、還付加算金の算定に使用される。
出典:ウィキペディア
申告しなかったのが故意でなくても、国や自治体は一切同情することなく納付を迫ってきます。最悪な場合は金額に関わらず「資産差押え」なども平気でやってくる事もあります。私のイメージでは暴力団より怖い存在だと思っており、申告の義務が発生した人は真っ先に済ませておきましょう。
3.確定申告の必要書類
義務があるのに確定申告を行わないリスクが分かったと思いますが、3月15日まで提出しなくてはいけない必要書類は以下の通りとなります。
- 確定申告書B様式
- 分離課税用の申告書
- 譲渡所得の内訳書
- 購入時・売却時の売買契約書
- 登記簿謄本
- 仲介手数料などの領収書
基本的には上記書類を準備しておけば、税務署から連絡がくることはあまりないと思われますが、担当者によってはその他の書類を要求してくることもあります。その際は臨機応変に対応するようにしましょう。
それでは必要書類の入手方法などを説明していきます。
確定申告書B様式
- 入手場所:税務署
- 記入例:確定申告書B様式
「給与所得者用」で申告書A様式というものと、「個人事業主用」のB様式があります。ただ、B様式の方が幅広い対象者をカバーしているので、B様式を利用しておくと良いでしょう。
分離課税用の申告書
- 入手場所:税務署
- 記入例:分離課税用の申告書
分離課税分の申告書は給与所得などの課税と、不動産や株式などの分離課税それぞれの税額を算出し、納税額の決定を行うための用紙です。確定申告書B様式を先に記入していれば分かり易いはずです。
譲渡所得の内訳書
- 入手場所:税務署
- 記入例:譲渡所得の内訳書
売却した不動産の所在地、土地の面積、売却金額など項目に沿って入力をしていくだけです。もし解らない場合は、上記の例を参考にしながら入力を進めてください。
購入時・売却時の売買契約書
- 入手場所:自分
- 備考:コピー可
売却した不動産の購入時・売却時に締結した売買契約書です。必須の書類ではありませんが、添付していないと税務署より高い確率で連絡がくるので、はじめから用意しておいた方がよいでしょう。
登記簿謄本
- 入手場所:所在地の法務局
- 備考:コピー可
売却する土地や建物を管轄する法務局で、用意されている申請書に入力して提出すれば取得することができます。1通600円で発行することができ、発行手数料は法務局内にある印紙売り場にて購入します。
仲介手数料などの領収書
- 入手場所:自分
- 備考:コピー可
売却時に受け取っている仲介手数料のコピー、登記費用やその他の費用のコピーを用意します。
4.インターネットで確定申告
最近ではインターネットで自宅から申告ができるサービスを国税庁がはじめたのをご存知でしょうか?私自身がまだ試していないので詳細なことをお伝え出来ませんが、簡単な概要だけ説明しておきます。
4-1. 事前準備
- まず「e-Tax」というソフトがパソコンで利用可能なのか確認します。
- 電子証明書を取得する
- 開始届出書を所轄する税務署に提出する
- 利用者識別番号等が発行(通知)される
4-2. 確定申告書などの作成
本来、税務署に出向いて書類一式を用意しますが、インターネットであればオンライン上で必要な書類への入力、作成を行うことが可能となります。また、パソコンを多少利用できる人であれば、確定申告の知識がなくても作成段階でアドバイスしてくれ、手入力より簡単に手続きできるかもしれません。
4-3. 申告書の印刷・送信
確定申告書に必要な書類への入力が全て終わったら、それぞれを印刷して税務署へオンライン送信します。そして、送信した内容が表示されるので、内容を再確認して終了となります。
「e-Tax」で確定申告
上記ページではじめての方向けに詳しく説明しているのでご覧ください。
まとめ
給与所得以外で副業などをされていたり、不動産の売却などをする際は「確定申告の義務」が発生することは必ず覚えておきましょう。
手書きで申告書の入力をはじめてする方には少し面倒な作業となりますが、慣れてしまえばすぐ簡単に思えるようになるはずです。こういった事が苦手な私でも今ではスラスラ入力できますから!
今回は確定申告をどのようにするのかお伝えしたので、次は確定申告をする事によって受けられるメリットに触れていこうと思います。あなたが想像している以上に恩恵を受けられるケースがあるので、確定申告をされる方には是非確認されることをおすすめします。